大きく分けて凸版画、凹版画、平版画、孔版画とそのどれにも属さない技法、そして2つ以上の技法を併用している技法があります。
【凸版画】 木版画、リノカット、紙版画、スタンピング等が含まれます。
【凹版画】 主にエッチングやアクアチントなど銅版画全般を指します。
【平版画】 リトグラフ、オフセット、コロタイプ等が含まれます。
【孔版画】 シルクスクリーン、ステンシル、ミメオグラフが含まれます。
その他の技法としましては、モノタイプ、ガラスステロ版、コラージュ、ハンドメイドプリント、シバクローム、ジークレー版等があります。
◆木 版 画
凸版形式を代表する最も古くから使われている木を彫って版を作る技法で、残したい図柄部分を浮き彫りにし、それ以外の面を除去してできた凸部にインクを塗り紙に転写する。
木版の技法には板目木版と木口木版の2種類があります。
【板目木版】
最も一般的な木版画技法で、木の幹を縦に切り、木目が水平に出るように挽いた木の板を彫って版木とする。
歴史的には最も古く、浮世絵等もこの板目木版で、色の数だけ版木を作り刷り重ねて、多色刷りの版画が作られる。
【木口木版】
堅い木を輪切りにし、幹の中央部を使う。
緻密な図柄、線書きに向いている為、大きな作品ではなく、書籍の挿し絵や蔵書票として発達した。
◆銅 版 画
凹版の技法で銅版画は銅板を引っ掻いたり、腐食させて、銅板に溝を作り、その銅板にインクを塗る。
溝に詰まったインクを残して表面を拭きとり、そこへ紙を乗せる。
エッチングプレスにかけ、圧力を加えるため、版の後がつくのが特徴です。
直刻法と腐食法があります。
【ドライポイント】
Dry point 版に銅鉄針などで直に刻描する技法。
溝のささくれがインクを滲ませ独特の味わいがある。
ささくれが摩耗し易いため、そのままでは、50枚ほど刷ると、ささくれの摩耗により、その強弱の調子が弱くなってしまうのであまり枚数が刷れないのが欠点です。
版が長持ちするようにメッキして摺ることもあるが、メッキするとささくれがメッキで覆われてしまい、メッキ前よりも、強弱の調子が弱まります。
【エングレービング】
ドライポイントと同様に銅版に直接、刻描して、溝を掘る技法です。
ビュランと言う特殊な刃で版に刻描するため、ドライポイントのようなささくれは出来ませんが、溝の深さは他の技法に比べて一番深くなる為、刷り上がりのインクが一番盛り上がります。
インクの盛りが多いために画面のメリハリが効き、強い調子が出ます。
【メゾチント】
ベルソーと呼ばれる彫刀で、銅版全体に均等なささくれ傷をくまなく付け黒く摺る。
そして、エングレーヴィング ビュランという先の鋭い彫刀でそのささくれを削り取るように彫って、インクを詰めプレス機にかける。
そのささくれが、とれた部分だけインクが乗らずに白くなる、つまり黒い画面を白く彫っていく技法です。
版の強さとしては最も弱く、50枚~80枚が刷り部数の限界といえます。
【エッチング】
腐食銅版画の代表的技法で、銅版にグランドと言う耐酸性のニスを塗り、そのグラウンド液が乾いたところで、鉄筆等で引っ掻く。
乾いたグラウンド液を剥がし、その銅版を硝酸に浸して、鉄筆で引っ掻いた部分だけを腐食させ、溝を作り、その溝にインクを詰め、紙に写し取る技法。
銅版としては一番強い版で200枚以上の版画を刷ることが可能です。
【アクアチント】
柔らかいハーフトーンの調子を出すための、腐食銅版画技法で、松ヤニの細かい粉末を使用します。
松ヤニ粉末を銅版の上に、ケーキに粉砂糖を振りかける様に散らし、それを加熱すると、松ヤニが銅版に定着します。
その上からグランドを塗ると、松ヤニの部分だけグランド液が銅版に塗られず、それを硝酸に浸すと、松ヤニは溶け、松ヤニ粉末の付いた部分だけが、腐食して、銅版に穴が開き、インクが乗ります。
手で引いた線とは違い、微妙なハーフトーンを表見する事が出来ます。
【シュガー・アクアチント】
アラビアゴムを混ぜた砂糖の飽和溶液を筆に付け、銅版に直接、絵や線や面を描き、その上からグランド液を塗って乾かします。
その銅版をぬるま湯につけると、筆で書いた部分が膨張して、グランド液が持ち上げられ、その部分だけグランド液が塗られていない空洞が出来ます。
それを硝酸に浸すと、筆で描いた、砂糖溶液の付いた空洞部分だけ、硝酸に溶け、銅版に銅版に穴が開き、インクが乗ります。
筆で書いた跡そのままのタッチが銅版画で表現できます。
【カーボランダム】
カーボランダム(炭化珪素)は自然では結晶状で石炭に似ていて、粒状あるいは細粒状で、混合された物質を著しく硬化させる特徴があります。
金属板やプレキシガラスなどにプラスチック樹脂と粒状のカーボランダムの混合物を塗り乾燥させると、硬化した材料が版の上で立体的なレリーフになります。
こうしてできた版は色の濃淡や構成に多様な変化を持ちながら、インクを保持する特徴があります。
厚い紙を柔軟に湿潤化して、プレスによってインクを刷り込みます。
この技法は金属や木片など炭化珪素を糊で定着させれば何にでもインクを乗せる事ができるため、立体コラージュレリーフができます。
主にマチエールの表現が必要な作家の版画に利用されます。
【ソフト・グランド・エッチング】
クレヨンや鉛筆での線描の効果を感じさせる技法として、アクアチントと併用される特殊な版画技
法です。
ソフトグランドエッチングは文字通り柔らかいグランド液を使う技法のことで、柔らかいグランドを引いた銅版は直接、触れると形が残ります。
その性質を利用して、布や枯葉などを置いてプレスするとそれらの凹凸の形が版面に残ります。
それを腐食させて版を作ると布や枯葉の凹凸の形そのままに、版画にすることが出来ます。
一般的には転写の方法をとって製版する事が多く、グランドを引いた銅版の上に紙を置き、その上から、鉛筆や、木製ペンで絵を描くと、その絵を描いた所のグランドだけが紙にくっつき、銅版から
剥がれ、銅の部分が露出します。
その版を腐食すると、鉛筆や木製ペンで描いたグランドが剥げた部分だけが腐食され、鉛筆や木製ペンで描いた通りの版ができあがります。
【ルーレット】
ヤスリ状の小さいローラーが先端に付いている道具を使い、他の技法と混用して製版して、複雑な諧調を作り出す技法です。
【エリオグラビュール】
写真製版銅版画とも呼ばれ、銅板に感光剤を塗り、写真を焼き付けるように写真のネガフィルムを感光剤を塗った銅版に焼き付け、それを腐食させて、写真と同じ図柄の銅版を作ります。
エリオグラビュールのみで制作された銅版画は、線の強弱が無いために、全体的に平面的な弱い印象があります。
ルオーは銅版画の制作にまずエリオグラビュールで第一段階の工程を行いました。
【ミクソグラフィア】
まず、ロウに形象を彫ったり、布を貼りつけたり、加熱して変形させたりしてロウ原版を造形します。
次に、ロウ原版に石膏をかぶせ、型をとり、これに電気メッキを施し銅を付着させ、銅原版を製作します。
この銅原版にインキを詰めて、プレスで摺ります。
特徴は、ロウ原版を利用して版を作るため大きな凹凸を持つ版画が制作出来ます。
◆リノカット
リノカットはリノリュームという床材によく用いられる樹脂の板を木版画と同じように彫って版を作ります。
リノリュームは木よりも柔らかいので、あまり力を必要としません。
リノカットで制作した作家としてはピカソが有名で、多数の名品を残しています。
◆平 版 画
版は平らなまま、科学的な処理などでインクの乗る部分と乗らない部分を作り分けて、プレス機で写し取ります。
【リトグラフ】
石灰石版に油性のクレヨンやインクで直接図版を描きます。
その上から水性のアラビアゴム液をかけると、油性のクレヨン等で描かれた部分がはじかれて、クレヨンで描かれていない部分にだけアラビアゴム液が載ります。
その後乾いた後にクレヨンとアラビアゴムを落とします。
これで石灰石版の上には親油性の部分とそれ以外の親水性の部分に分かれます。
その版に油性のリトグラフのインクをローラで載せると、親油性の部分だけにインクが載り、紙に移すと、描いた同じ図柄が紙に移ります。
筆使いのタッチまで表現できるのが最大の魅力です。
プラハの劇作家ゼネフェターによって発明されました。
【フォトリトグラフ】
写真製版石版画とも呼ばれ、石板に感光剤を塗り、写真を焼き付けるように写真のネガフィルムを感光剤を塗った石板に焼き付け、それをリトグラフ技法で製版して、写真と同じ図柄の石版を作ります。
【オフセット】
版胴・ゴムブランケット・圧胴の3つの円筒が接触しながら回転し、自動的に反面に水とインクをつけ、版面からゴムブランケットに転写し、更に紙に再転写します。
この方法により連続して大量な印刷が可能になりました。
◆孔 版
絹の折り目や、図版をくり抜いた型紙など、版上の穴を通して下へインクを刷りとる方式。
【シルクスクリーン】
枠に張った絹やナイロンなどのフィルムに感光剤などで図版を謄写します。
直接絹や、ナイロンにマスキングの塗料を塗り制作することもあります。
ぼかした表現をする事が出来ないので、メリハリの利いた作品に向く技法です。
一版で一色しか摺れないため、色の階調を表現するには、多数の版で何回も刷る必要があります。
ヤマガタなどは、100版位違う色版を重ねて刷ります。
シルクスクリーンは絵の具が紙の上に乗っている状態で作品となっている為、湿気などにより波打ちする事が多く、丸めたりすると絵の具が剥離する事もあるので注意が必要です。
【ステンシル】
日本では伝統的に着物や布地の型染めに使用される技法で、切り抜いた型紙の上から絵の具を塗り、型紙の切り抜いた部分がその切り抜いた形のまま、下の紙に絵の具が転写されます。
表現方法としては色面で作品が構成されるため、単純な形で表現される抽象画やデザイン的な作品に有効な技法です。
ステンシルは圧力を掛けて紙に染み込ませる技法で無いため、紙を曲げたり、折ったりすると、亀裂や割れ、剥離を生じますので、シルクスクリーン同様注意が必要です。
◆モノタイプ
技法的には2種類のモノタイプが存在します。
伝統的なモノタイプとしましてはガラスに絵の具で絵を描いてそれを
紙に写し取る技法で、モネなど印象派の画家達が使った技法で、版画と言っても、出来上がる版画は1枚から3枚程度で更に加筆をすることもあるため、版画と言うよりは一点物の油絵や水彩画に近いといえます。
紙を剥がす際できる質感にとても良い味わいがあります。
◆ジークレー版
最新のデジタルカメラとスキャナー技術を駆使して作成される版画。
アイリス工房で制作されるジークレー版画はアイリスと呼ばれています。
ジークレー専用のインクジェットプリンターから大きさ15ミクロンのシアン、マジェンタ、黄色、黒色の4色の粒子が吹き付けられ制作されます。
だいたい一枚の大判のジークレー版画には数十億粒以上のインク粒子が吹き付けられます。
水性のインクを使用するために通常表面は乾燥した感じに仕上がり、見た感じはリトグラフに近い感じになりますすが、その上からシルクスクリーンで透明ニスをかける場合はシルクスクリーンの様な仕上がりになります。
ジクリーとも呼ばれるています。
◆シバクローム
通常の写真の現像方法は「発色現像法」とよび、科学変化により、元々色のない媒体の上に必要な部分だけ色を発色指させる技法です。
銀染料漂白法と呼ばれる技法で、アゾ染料により色彩を形成する技法です。
銀染料漂白法とは、もともと媒体が持つ色を漂白により除去して必要な色だけを残す写真技法です。
発色現像法のプリントは化学変化した色が経年に伴い色あせするため美術品の色彩を保存する方法としては問題がありました。
銀染料漂白法のシバクロームは元々ある色彩の中で不必要な色彩のみを除く方法のため、色彩自身の耐久性は強く、版画技法として近年よく使われる技法となっています。
チバクローム、イルフォクロームとも呼ばれています。
◆ミックスドメディア
混合技法と言う意味で、二種類以上の技法がミックスされて制作されたものをいいます。
以前は油絵の具と水彩絵の具の両方を使用した、作品の事を通常指す言葉でしたが、ラッセンの
技法をミックスドメディアと呼ぶようになってから、版画でもいくつかの技法を併用して制作された作品をミックスドメディアと呼ぶようになりました。
◆コラージュ
コラージュとはフランス語で張り付けを意味し、布や紙を貼り付けた作品をコラージュといいます。
ピカソやブラックがキュビズムの一つの表現方法としてパピエコレと呼ばれる、新聞や、包装紙、布を作品に張り付けたのが始まりです。
ミロ、クラーヴェ、タピエス等により制作されています。
通常コラージュだけで版画を制作されることは希で、リトグラフや銅版画等の技法と併用で使用されます。
◆コロタイプ
ゼラチンと重クローム酸カリの混合液を(感光液)をガラス版に塗布し、ネガなどをガラス版に焼き付け印刷する技法です。
大量印刷には向きません。