◆版画のサイン
最も一般的には署名は鉛筆でされます。
作家が版画に署名を入れ始めたのは19世紀の終わりからで、それまでは版画には署名は入れられませんでした。
署名が入るのは特別友人知人に贈呈した際に献辞と一緒に名前が書き入れられる(為書き)に過ぎませんでした。
1870年以降から、マリー・カサット(1844~1926・アメリカ) ジェームス・アンソール(1860~1949・ベルギー)が全ての版画に鉛筆で署名を入れるようになり広がって行ったようです。
◆カタログレゾネ
カタログレゾネとは、全作品資料の載っている画集の事です。
有名作家の油絵や版画等の研究などのために、作られる画集で発行部数もそれほど多くないこともあり、高額なカタログレゾネも存在します。
作品の真贋を確認する為にも頻繁に利用しますが、時には間違いや誤植もあるようです。
版画作品のレゾネに原画が記載されており、色が違う事もありました。
お手持ちの作品がレゾネの記載と違う場合も慌てずに信頼できる画廊に相談して下さい。。
◆オークションカタログ用語
オークションは通常英語にて状態記載があり、その代表的な用語は下記のようになります。
海外のオークションカタログを見られた時の参考にして下さい。
【汚れ等】
stain・しみ soiling・汚れ foxing・斑点(かびシミ) remains of tape・テープ跡 glue stain・糊じみ mat stain・マット跡(マット焼け) hinge stain・ヒンジ跡
【傷等】
scratch・ひっかき傷 crease・折れ、しわ tear・裂け目 rubbed・擦り傷 scuff・擦り傷 abration・擦り傷 skinned・剥離 pressure marks・押し跡 micks・切れ口
【変色等】
discoloration・変色 time staining・経年による変色 faded・退色 light stain・日焼けsarkening・くすみ
◆版元について
版画を制作するところをPrinter(刷元)とよび、版画を企画販売する元会社はPublisher(版元)と呼んでいます。
元来版画は作家本人が刷り、自分自身で販売していて、版画の版元や刷元はありませんでした。
但し、版画を添付した挿画本は、他の出版物と同様に印刷所で刷り、出版社が発行していました。
画商として画家に版画制作を依頼して成功したのはアンボワーズ・ヴォラールです。
生涯に多数の名品の挿画本や版画集を出版しました。
その後、1940年代になるとマーグがシャガールやミロの版画を画廊企画として出版するようになり、徐々に他の画廊も展覧会の平行して版画を出版するようになってきました。
1970年代に入り、ビジョンヌーベル社が販売会社としてフランス人作家の版画を企画して展示会などで販売する形態を開始し始めました。
その後、画家・版元・刷元の3者がそれぞれを分担して版画の製作出版するのが一般化しました。
現在では人気作家自身がプロダクション会社(版元)を設立し、画廊は単にその作品を仕入れて売るだけの役割になってしまう事も少なくありません。
◆オリジナル版画について
オリジナル版画と言う概念は、いくつか有り判断基準が分かれております。
一番厳格な分け方をする場合は、作家が自分で原画を考え、そして自分で版を作り自分で刷った作品のみをオリジナル版画と考え、それ以外は全て複製版画と見る分け方です。
ただこの考え方は現在では範囲が狭すぎて、現在ではあまり妥当とは言えなくなっています。
現在日本で通常オリジナル版画と呼ばれる作品の要件は次の2点です。
1.版画を制作する目的で原画作品が制作されている事。
2.作家自身がその刷り上がった作品を確認・監修している事。
つまり版を作家自らが制作する事、サインの有無等はオリジナル版画たる要件ではありません。
日本の世界に誇れる文化遺産である浮世絵は、まさに作家、彫り師刷り師の分業によりその作品が作られたことを見ても、オリジナルの要件はこの2点であることは明白な事です。
オリジナル版画以外の版画は「エスタンプ(複製版画)」と呼ばれています。
但し、エスタンプもその作品によりオリジナルに近い価値を持つ作品もあります。
シャガール、ビュッフェの『ムルロー工房・ソルリエ版』、ピカソ、ブラックの『ジャック・ヴィヨン版』などがそれにあたります。
◆版画の保存方法
版画の保存に気を付けなければいけないのは直射日光、湿気、熱です。
版画は直射日光に含まれる紫外線などで色素が分解されて色が薄くなってしまいます。
色素の中でも赤色や青色が光によって退色しやすいです。
直射日光で薄くなった作品は修復が不可能なため、価値は下がります。
くれぐれも直射日光が当たらない場所の壁面の飾ってください。
紫外線防止のアクリルに入っていても、直射日光に当て続けると退色を起こしますので、紫外線防止アクリルを過信し過ぎない事をお勧めします。
湿気も作品の大敵で、湿気によってかびが発生したり紙が波打ちしてきたりしますので、梅雨時や長雨が続くときは除湿器等のご利用をお勧めいたします。
多数の作品をお持ちのコレクターに有りがちですが、箱に入れっぱなしにするのもよくありません。
段ボールは以外と湿気を吸い取るもので、その段ボール箱自体が吸い取った湿気により箱の中が、高湿度に陥ります。
年に数回は、よく晴れた日に額を箱から出して、陰干しして下さい。
◆版画の保証書について
版画が美術品として取引された歴史は一般的にほぼこの200年程です。
それ以前は一部のレンブラント、デューラーなどの一部版画作品を除いて、書籍の一部として取り扱われてきました。
現在では版画に保証書や証明書を付けて販売するのが一般的と思われている方も多いかと思いますが、実際はこの20年~30年前位からです。
版画は作品の真性の保証はもちろん販売する側の義務で、特別に保証書を発行することはありませんでした。
大手販売会社が販売アイテムの一つとして、一点一点に保証書を付け始めたこと、しかも日本のみでこの習慣は始まりました。
版画は同じ作品が多数有り、贋物を作るのには多大なコストと、比べても分からないほど精密な贋物は作ることが不可能なため、リスクも非常に高く基本的には殆ど存在しないため、証明書は必要ありませんでした。
しかしながら昨今の現状を見ますと、インターネットオークション等で数多くの贋物が氾濫しております。
画像でしか判断出来ない為、高性能の印刷機で刷れば分からないのが現状です。
真作の保証を約束する信頼のある画廊からの購入をお勧めいたします。
◆絵の値段ついて
絵の価格が適正かどうかは、絵を買いたい人の頭を悩ます一番の疑問だと思います。
絵の販売価格には、デパートや展示会場で販売される価格、業者間の相場価格、最近ではインターネットオークションの価格、絵を換金したときの買取価格など様々な価格が存在します。
絵には金・銀、又は株のように簡単に新聞で確認できる決まった価格はありません。
それは絵の価格の大半の部分が売り手と買い手の意思により決定されるためです。
オークションの場合、それは極端に現れますが、どうしてもその作品が欲しい人2人が競り合えば、オークションの落札価格は際限なく高くなります。
版画のような複数有る作品の場合は過去の売買例を参考にする事はありますが、競り合えば同じ事です。
しかしながら、売り手の価格がそれ以上に高ければ取引の不成立、不落札となってしまいます。
作品の換金、買取依頼を画廊に頼むとしても、その作品の需要と供給の比率により価格が変動してしまいます。
絵の価格は売る人が存在して初めて取引が始まりますが、欲しい人がいないと取引は成立しません。
多数の売りたい人、買いたい人の情報を持っている全国各地の画廊は、ある程度安定した価格を提示できると思います。